ニプロ株式会社
様 「ダイアライザーの歴史、構造」 |
Q1) |
わかりやすい説明ありがとうございました。
内部濾過についてですが、耳にした
ことはありますが、この現象によって起こる問題が良くわかりません。
是非説明して頂けたらありがたいです。 |
A1) |
内部濾過現象によって起こりうる問題点としては、
@濾過量が血液流量などの透析条件、膜面積にも依存するため、濾過量単独をコントロールが困難なこと。
A透析液が大量に流入するため、清浄度にはより気をつけなければならないこと。 |
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Q2) |
ダイアライザの構造の視点でエコはありますか?(今後でも) |
A2) |
弊社ではecoタイプダイアライザとして以下の3つの視点から取り組んでおります。
・患者様に対するエコ
患者様の血液に接触する中空糸やハウジングに溶出物の少ない材質を使用しました。(BPA:ビスフェノールA)。
・医療従事者様に対するエコ
モジュールの材質をPP(ポリプロピレン)に変更に伴う軽量化および包装材のコンパクト化、
簡素化により、取り扱う医療従事者の負担を減らすことが可能です。
・地球環境に対するエコ
モジュールの材質をPP(ポリプロピレン)に変更して軽量化することによって、
輸送時に発する炭酸ガス量や廃棄物量の減量が可能です。
今後もエコに関する取組をこの3つ視点から更に進めて参りたいと考えます。 |
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Q3) |
積層型ダイアライザの利点は?なぜ今も積層型ダイアライザがあるのか? |
A3) |
弊社では膜の性能や量産性など総合的に判断して構造的に中空糸タイプが最も優れていると考えます。
従いましてご質問につきましては明確な回答を持ち合わせておりません。御了承お願い致します。 |
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Q4) |
Pはなぜ除去しづらいかという理由が始めて知った。 |
A4) |
Pの様な荷電性を有する物質の透過性は膜の材質によって影響することをご理解下さい。
弊社のCTA膜(FBシリーズ)は膜材質の中でも荷電性が小さく、それらの影響を比較的受けにくいと考えております。 |
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Q5) |
ドライタイプのダイアライザには品質保持のためにグリセリンが使われていると
思うが、これは人体に対して無害か有害か? |
A5) |
グリセリンは注射剤(血液、体液の浸透圧調節剤)として臨床での使用実績があります。
弊社のダイアライザ(CTA膜)に関しては、ご使用前に適切な条件でプライミング洗浄を行って頂くことで洗い流すことが可能です。通常のご使用の範囲では問題ないと考えます。 |
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Q6) |
透析液入口と出口が同じ向きに向いているのはなぜか?(片側にあるのはなぜ?) |
A6) |
昔の透析器は膜性能が低いことから、ハウジング径も大きく、四角い形状にする場合もありました。
そこで透析器内の透析液の偏流を減らすためには逆向きにする方が良いとされていました。
今の透析器はハウジングも円形で小さくなり、透析装置に装着する際の操作性向上や包装のコンパクト化などの利点があるためです。 |
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Q7) |
今後のダイアライザの構造に期待できる事は?(吸着or荷電など) |
A7) |
膜材質の吸着性・荷電性を生かし、特定の物質除去性能を高めることが考えられます。
現在使用中の膜材料の改良や新たな材料の開発は今後も続けて参ります。 |
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Q8) |
コイル型(NIPRO社製)使用時に、凝血をおこす事は今と比べ多かったか? |
A8) |
コイルの形状からみて、血液流路が広く、血液凝固は起こしにくい構造ですが、コーナー部分の血液の流れが少ない部分は凝固が見られます。
当時ヘパリンは初回1000〜2000単位、持続投与は500〜1000単位/時と現在の使用レベルと比べると投与量が少ないと思います。
また、コイル使用時はエリスロポエチンが使用されていないため、ヘマトクリットは25〜20%程度で血液粘度も低いと考えられます。
また、コイル型ダイアライザの中分子量物質、小分子量物質のクリアランスが現在のダイアライザに比べて低く、尿毒性物質に血中レベルが高く、出血しやすい状況があると考えられます。 |
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東レ・メディカル株式会社
様 「膜素材の特性、生体適合性について」 |
Q1) |
今後のダイアライザで人植え込み型はできますか。(近い将来可能か?) |
A1) |
私見でありますが、出来ないと思います。
現行の人工腎臓と、生体腎の構造的な違いは透析液の有無でしょう。
透析液供給装置の携行が必要になるとすれば、わざわざダイアライザを人に植え込む必要はなく、装置と同様にダイアライザも携行すればよいわけです。
携行型のダイアライザ装置は古くから研究されていますが、最近では、電池やモーターの小型化により、よりコンパクトになっているそうです。
携帯型人工腎臓の一例:Davenport A. et.al., Lancet2007, 370巻,
2005頁 |
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Q2) |
W型やX型ではPS膜が多く使用されているが、EVAL膜やPMMA膜で、W型やX型の膜は作れないのか? |
A2) |
東レ社製品であるPMMA膜に関してお答えいたします。
ご存知のように、ダイアライザの機能分類はβ2MGクリアランスによって規定されています。
PMMA膜においては、吸着によってβ2MGを除去することから、PMMA膜の細孔半径を最適化し、細孔の数を増やすことによってβ2MG吸着容量を上げてIV
型化したBG-PQシリーズを既に販売しております。
β2MGの吸着容量を増やす手段は残されておりますが、現行の形状のままでは製品化できませんので、現在のところはPMMA膜におけるV型製品の開発は未定です。 |
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Q3) |
今後、新しい膜素材の導入はありますか? |
A3) |
今のところ、全く新しい膜素材の開発予定はありません。
2010年3月のHPM研究会(東京)において、社会保険中央病院 山家先生らにより、「親水性を向上させた東レ社製ダイアライザFS-211の臨床評価」の発表がありました。
これはポリスルホン膜を用いた新製品の治験結果の発表であり新しい膜素材ではありませんが、表題どおり、ポリスルホン膜内表面への新規の工夫により親水性を向上させました。
「FS-211は、安全かつ有効な性能を示し、残血についても著明に改善されたダイアライザである」と結論付けられています。 |
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Q4) |
ダイアライザの洗浄に用いる生食の量は1000mlで良いのか?
必要な洗浄量は?洗浄量が増えれば、与える影響はさらに少なくなるのか? |
A4) |
「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」(平澤ほか:透析医学会誌2001,
34(9), 1257-1286)において、1000 mLの生食液を使用する旨が記載されております。
ただし、この時、血液側の洗浄時に透析液側も同時に流して、(内部ろ過を利用して)膜内部の洗浄も行うことが望ましい、とされております。
施設によっては、血液側・透析液側同時洗浄が必ずしも実施されているわけではないと思いますので、1000 mLの生食液を用いたプライミング法においても、さらに洗浄効果を良くする工夫が残されている場合があります。
またプライミング時の洗浄量を規定量以上に増やした場合に、「患者が感じるにおいが軽減した」(津田ら:透析医学会2001 特別号O877)、「痒み軽減効果があった」(西本ら:透析会誌33巻4号287頁2000)等の報告もありますので、洗浄量増により患者に与える影響がさらに少なくなる場合がある、と言えます。 |
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Q5) |
内部濾過を測定するために障害となっていることは? |
A5). |
簡便法を含めた内部ろ過測定のための方法論は、峰島らを中心に報告されています(峰島:臨床透析16巻869頁2000、崎山ら:腎と透析「別冊HDF療法'07」63巻192頁2007、峰島:臨床透析22巻529頁2006)。
簡便法においては、血液側・透析液側の入口・出口4点の圧力とその時のUFRを測定するわけですが、透析開始後どの時点でそれらの値が安定したかの判定が難しく、一方、臨床では頻回にこれらを測定できないジレンマが生じます。
現在、内部ろ過促進型ダイアライザの内部ろ過流量は、35 mL/min以上と規定されていますが(川西ら:透析会誌38巻2号149頁2005)、上述の理由により、東レ社製品においても上記測定法による測定値を確定することが難しく、UFRが比較的高く内部ろ過流量も高くなっている可能性のあるIV型・V型製品については、「内部ろ過促進型血液透析透析液基準」を採用して、透析液清浄化を実施していただくようお願いいたします。 |
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Q6) |
大変わかりやすい説明ありがとうございます。
東レの膜なのですが、他のメーカーに比べ、残血が多い気がします。(PS、PMMAの両方)それはなぜなのでしょうか?
あと、残血の起こる仕組み、対策について教えて頂けたら幸いです。 |
A6) |
まずPMMAからお話しますと、低分子量蛋白質の除去メカニズムとして、他の膜素材と異なり「吸着」が主であることから、マトリックス蛋白質のような血小板を活性化する蛋白質まで吸着して、血小板を活性化してしまっている可能性が挙げられます。
ただし、どの患者さんでも残血するわけではないことからも分かりますように、血小板活性化の要因は、透析患者さん特有の微小炎症状態にも関連すると考えられ、「PMMA膜を使っても残血しないような低い炎症状態にしておくことが肝要である」とのお考えでPMMA膜を採用いただいている先生方も多いです(青池、政金監修:PMMA座談会2009)。
PS膜ダイアライザの場合でも、東レ社製品は他社製品に比べて残血が多いと指摘いただきました。
PMMA膜ほどではないにしろ、やはりこれも、膜の内表面特性の違いが最も大きな要因だと考えています。
すなわち、当社のPS膜には、他社PS膜と同様に親水化ポリマーとしてPVP(ポリビニルピロリドン)を使用しておりますが、γ線滅菌を利用してPVPを架橋・固定化しているのが大きな特徴です。
PVPに架橋構造を持たせることによって、透析中の溶出が防止できるとの考えからこの方法を採用しております。
PVPは、PS膜に良好な生体適合性を与えているとの報告がある一方、従前より報告が続いているPS膜特有の副症状との関連やPVP溶出に伴う膜の生体適合性の変化を示唆する報告も出てきています。
従って、PVPを溶出させない架橋構造が重要であると東レ社は考えておりますが、一方、架橋によって、中空糸内表面の均一なPVP分布が阻害され、各種の血液成分の付着を招いて残血につながっている可能性は否めません。
この当社特有のPVP架橋構造を保持したまま、内表面親水性を改善した新製品を評価した結果、「残血についても著明に改善された」と報告されたことは、ご質問の第2項に記述したとおりです。 |
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Q7) |
なぜ、中途半端にモイストタイプというものがあるのか? |
A7) |
ご質問第6項に記述したPVPの架橋構造を形成するためです。
PVPの架橋構造は、γ線を照射した際にPVP分子構造内に生じるラジカルによって形成されるのですが、この時、反応の場として水環境が必要になります。
また、空気すなわち酸素が同時に存在しますと、大量に発生した酸素ラジカルがPVP架橋を通り越して分解反応を促進してしまいます。
当初ドライ製品を標榜しておりましたが、ドライ品では反応の場としての水分がなく、しかも分解反応を促進する酸素が豊富な環境下ですから、PVPは架橋構造を取らずに分解してしまいました。
そこでモイストタイプ中空糸では、反応の場として中空糸に水分を残し、周辺の酸素(空気)を窒素に置き換えて分解反応を防いで、架橋構造を作らせることに成功しました。 |
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Q8) |
HD開始時に匂いを感じるというPtがいますが、悪影響は匂い以外にありますか?
また匂いを感じる→どこが悪い? |
A8) |
PMMA膜を使用される患者さんは、一定の割合で匂いを感じていらっしゃるようです。
「不快」と感じて苦情になった例もあれば、フルーティと表現された例もありました。
透析中、匂っているわけではなく、穿刺と同時に匂ってすぐに収まる,とうかがったこともあります。
まさしく「匂いを感じる」のであり、匂っていらっしゃるわけではなさそうです。
匂いを感じることと、何らかの病態との関係については聞いたことはありません。 |
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旭化成クラレメディカル株式会社
様 「ダイアライザーの効率」 |
Q1) |
多くの効率指標があるが、臨床では何を利用して評価するのが望ましいのか? |
A1) |
種々の効率指標のそれぞれに一長一短があることから、単一の効率指標でなく複数の効率指標から総合的に評価することが重要であると考えられます。
体液の浄化を表す指標としてクリアスペース率は優れた指標ですが、体液量の実測が必要なこと、廃液濃度を測定する必要があること、など日常での測定は容易ではありません。
また、吸着で除去される物質については評価が困難です。
また、Kt/Vはおもに尿素に関する指標で生命予後との関連も報告されており、日本透析医学会の統計調査や欧州・米国のガイドラインでも示され、最も汎用されている効率指標ですが、PCR(蛋白異化率)やTAC(時間平均濃度)などと合わせて評価する必要があります。 |
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Q2) |
評価する際に基準となる値はいくつ? |
A2) |
(社)日本透析医学会の統計調査では、Kt/Vspは1.4〜1.6に達するまではそれが大きいほど死亡のリスクは低下する、と報告されています。
しかし患者背景(性別や年齢あるいは依存症)により至適透析処方は異なることから、個々の患者の身体状況を熟慮したうえで透析処方を個々に調整する必要がある、と考えられています。
出典:中井滋「わが国で血液透析患者の透析量をどう設定すべきか」
EBM透析療法 36-39 中外医学社
一方、血液中に存在する溶質の血中濃度については多くの溶質でその基準値が示されていますが、Kt/V以外の透析効率の指標についてはエビデンスのある報告はほとんどありません。 |
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Q3) |
効率は良ければ良いだけでいいのか? |
A3) |
「人工腎臓には、補えていない腎臓の機能があることに加え、最も重要な尿毒素の排泄能力も、比較的抜けやすい尿素でさえ10%程度にすぎない。」と考えられています。
出典:鈴木一之「透析医透析患者になってわかったしっかり透析のヒケツ」 MCメディカ出版
また、β2-mやリンは、透析による除去量は産生量にはるかに及ばないことから、可能な限り除去すべき物質であると考えられます。
一方、尿素やクレアチニンの除去効率をあげると、これらと分子量がほぼ同じであるアミノ酸の損失も増大します。
高齢透析患者には、アミノ酸の損失を考慮して効率を考えるべき、との報告もあります。 |
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Q4) |
効率が悪くなった。原因は何が考えられますか? |
A4) |
透析膜や治療モード・透析条件の変更がなければ、シャントの状態の変化(実血液流量の減少)や除去対象物質の産生亢進などが考えられます。
産生亢進の場合はその原因(病態の変化や薬剤投与の影響など)を特定し、排除することが必要と考えられます。 |
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Q5) |
QB、QDのクリアランスでパラメータを固定せずに変えた場合のデータがほしい。 |
A5) |
透析液流量増大の効果は高血流の場合に顕著となります。
KoA(総括物質移動−面積係数)を利用してパラメータを固定せずに変えた場合のクリアランスを計算することが可能です。
旭化成クラレメディカル(株)の医療従事者向けwebサイト上で計算ができますので、ご関心のある方はご利用ください。
http://www.m3.com/ より会員登録してご利用ください。
(サービスコードは弊社営業担当にお問い合わせください) |
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Q6) |
不均一除去を少なくするためには、どうすればよいか |
A6) |
不均一除去は組織・間質から血中への移行が遅い物質で顕著に起こります。
とくに分子量の大きな物質では除去率とクリアスペース率の乖離が大きくなります。
最も有効な方法は透析時間の延長です。
またPMMAやEVOH(EVAL)膜はセルロース系膜より不均一除去が少ない、との報告があります。
参考文献:及川一彦 「EVAL膜(KF-C)の溶質および体液の細胞内外移動に対する影響」
腎と透析Vol.43別冊 ハイパフォーマンスメンブレン'97 83-85 1997 |
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Q7) |
Kt/V シングルとダブルの違い |
A7) |
single-pool Kt/V (Kt/Vsp)は
除去率の関数であることから、除去率が抱える問題(リバウンド等)と同じ問題を包含しています。
透析時間が独立した予後規定因子にもかかわらず、Kt/Vspでは短時間透析が過大評価されます。
two-pool modelを用いたequilibrated Kt/V(Kt/Ve)は
除去量に沿った補正が行われており、
透析時間や透析効率が異なっても大きな誤差を生じません。
Kt/Vspに比べより体液の浄化を反映している、といえます。
参考資料:透析百科 http://202.216.128.227/ |
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Q8) |
ダブル1.2以上で透析後のKが4以上 なぜか |
A8) |
カリウムの基準値は3.6〜5.0mEq/Lとされていますので4.0
mEq/Lは基準値内であるといえますが、十分な透析量が確保されているにもかかわらずカリウムが高値である場合は、原因の鑑別が必要になります。
溶血や血小板・白血球の増加によって偽性に上昇する場合や、インスリン不足、四肢麻痺、薬剤の投与(アンギオテンシンII受容体遮断薬など)等、さまざまな原因が考えられます。
参考資料:「透析患者の検査値の読み方」日本メディカルセンター |
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Q9) |
dpKt/Vを求める公式で必要なものは |
A9) |
簡易式ではシングルプールで得られた数値(Kt/Vsp)と透析時間によって算出されます。
dpKt/V(Kt/Ve)を求める公式(簡易式)
Kt/Vsp - 0.6 × Kt/Vsp / 透析時間 + 0.03
(アクセスがV-Vの場合:Kt/Vsp - 0.47 * Kt/Vsp /
透析時間 + 0.02)
出典:「European Best Practice Guidelines」(欧州の透析治療のガイドライン)より |
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Q10) |
QDはQBの2.5倍が至適? |
A10) |
QBの2.5倍を越えるQDを確保しても透析効率が大きく上昇しないことから、およそ2.5倍が目安とされています。 |
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